タイラー・ヒーローの43のコト

 5位マイアミ・ヒートが3位ボストン・セルティックスを2-1とリードして迎えたイースタンカンファレンスファイナル第4戦、ヒートに「シンデレラ・ボーイ」が登場した。その名は、タイラー・ヒーロー。2019年1巡目13位でヒートに入団した若武者は、初めてのプレイオフにもかかわらず、20歳以下のルーキーとして、プレイオフの1試合の得点で歴代2位となる37点を奪取。奇しくも、スペルこそ微妙に異なるが、まさに「ヒーロー」(英雄)のような活躍で勝利に貢献し、ヒートが3-1とファイナル進出に王手をかけた。

 一体、タイラー・ヒーローとは何者なのか。それを知るべく、米国のお洒落な男性向けマガジンの老舗「GQ」が、ヒーローへのインタビューでぶつけた43の質問とその回答をチェックしてみよう。彼の個性的かつユニークな回答に注目したい。



Q.1 バスケットボールをいつ始めたか覚えている?

――おそらく、YMCA(Young Men's Christian Association)の4年生か5年生(10歳か11歳)の時。小さなコートと小さなゴールのある小さなリーグでプレイしていたと思うよ。


Q.2 いつ頃「自分はシュートがうまい」と気づいた?

――7年生(日本の中学1年生)の時、シューティングコーチに出会って、その時にシュートを改善したんだ。それまで、両手でシュートを打っていた。それ以来、私は本当にシュートをよく決められるようになったよ。

Q.3 君がある子どもにリストバンドを渡した映像を見たが、彼は完全におかしくなっていたね。一体、何があったんだい?

――ウォームアップしている時かな、彼がずっと前から会場に来ているのを見ていたんだ。彼は私の大学時代のユニフォームを着ていて、試合が始まった瞬間、まさにクレイジーになったんだよ。彼のジャージーにサインをしたかったんだけどその時間がなかったから、代わりに彼にリストバンドを投げたってわけさ。

Q.4 その映像をどうやって見たの?

――SNSか何かで見たよ。自分が他の人の人生にそこまで大きなインパクトを与えているなんて、考えてもみなかった。彼は私にインスタグラムでDMを送ってきてくれたから、彼をフォローし返して、ジャージーも送ったよ。

Q.5 ドラフトの時のスーツについて聞かないとね。どういった経緯であのスーツを着ようと?

――自分が参加できるドラフトは人生で1回だけだということを考えた時、「そうだな、目立ってみたいな。そして、爪跡を残そうかな」と思ったんだ。ロサンゼルスにいるデザイナーさんに手伝ってもらって、スーツを選んだよ。本当は、もっと白の花柄みたいなものを着たかったんだけど、そのデザイナーさんには黒のほうが似合うって言われたんだ。



Q.6 君のお母さんや友達からはどんな反応があったんだい?

――「いいね!」と言ってもらえたよ。(笑)気に入ってくれたみたいだった。


Q.7 こき下ろされるって、内心思っていた?

――気に入らなかったらおそらく言わないだろうな、と思っていたよ。(笑)


Q.8 子どもの頃からスタイルやファッションにハマっていた?

――その通り。私はずっと、レブロンに憧れを抱いていて、彼がどういった姿で会場に来るのかに注目してきた。私は、年を重ねるにつれ、自分自身をよく表していると思えるような服を着るようになっていったよ。でも、人の目を気にしないようになったのは、本当に自分の好きなものを着るようになった時からかな。

Q.9 その自信、試合にも確かに現れているように思う。その自信がついてきたのはいつ頃から

――高校3年生の時かな。ウィスコンシンの件(※)があって、自分のやりたいことができるということがわかり、自信がついたかな。その決断をしたことで、自分の成長が早まったと思う。だから、今は自信を持っているよ。

※:ヒーローはもともと、地元のウィスコンシン州でプレーすることを明言していたが、その後に名門・ケンタッキー大学からオファーを受けたため、最終的にケンタッキー大学でプレイすることになった。

Q.10 観客席のほうから聞こえてくる野次は聞いている?

――もちろん。それを糧にしているところもある。ウィスコンシンの件で、私に口撃を仕掛けてくるファンもいた。でもそれが逆に、私が大学でプレイするための準備になったと思う。大学での成績は、実はホームよりもアウェーのほうが良かったよ。

Q.11 今は嫌われることも少なくなったでしょう? 実際、寂しい?

――うん、寂しいね。

Q.12 時が経てば、また何年かしたら君を嫌う者が出てくるよ。

――そうだろうね。

Q.13 君がスニーカーの熱狂的なファンなのは知っているんだけど、今何足くらい持っている?

――正直、全くわからないな。推測することもできないくらいだよ。ナイキと契約してからは、山ほど靴を手に入れられるようになったんだ。ケンタッキー大学では、全ての備品がナイキだったしね。最近、友達が家に来たんだけど、「この靴、まだ包装されているのかよ。2〜3カ月前に一緒に買いに行ったのに」って言っていたよ。

Q.14 契約後、初めての大きな買い物はどんな物だった?

――ウェブサイトからいくつかのものを買ったくらいかな。マイアミに引っ越してきてから、持っていた服を処分して、暖かな気候に合う服を手に入れなければならなかったよ。契約したナイキで1年間に使える金額が決まっているんだよね。


Q.15 ぶっちゃけ、いくらなの?

――聞かないほうがいいと思うよ?

Q.16 50,000ドル以下? それとも以上?

――以下かな。




Q.17 大学時代にはなかったような、長時間の移動をしなければならないことに対する苦労みたいなものはある?

――私はルーティーンが好きな人間で、外出先でのルーティーンは家でのルーティーンとは違うんだ。どうにかして、家でやっているのと同じように良いルーティーンを、外出先でも実現できないかと考えているよ。

Q.18 君のルーティーンはどんな種類のもの?

――家にいるときは、たいてい朝にシュート練習をするよ。早めに体育館に入って、体を動かして、少しウエイトをして、本格的なシュート練習の前に軽くシュートを打つ。そして、シュート練習が終わったら、もう少し追加でシュートを打って、それから家に帰るんだ。試合がある日は毎回、同じものを食べているよ。

Q.19 どんな食事?

――ステーキ、マッシュポテト、バターヌードル、チキンアルフレッド、それにパンかな。

Q.20 炭水化物が多いね。

――私にはそれが合っているんだ。

Q.21 いつからこのルーティーンを続けている?

――おそらく、高校生の時からかな。ステーキは大学の頃から追加したんだ。麺とかマッシュポテトは、高校の頃からだね。

Q.22 ヒートには栄養士はいるの?

――もちろん。彼女の名前はベッツィー。試合前の食事と施設での毎朝の朝食を担当してくれているよ。

Q.23 彼女は君に、試合前の食事についてフィードバックをくれた

――彼女は「あまりおすすめできない」と言っていたよ。彼女は、私のルーティーンを嫌がっているけど、やらなければならないんだと私が彼女に伝えたよ。

Q.24 彼女は君に何を食べてほしいって?

――ステーキをチキンに切り替えなさいって言われたよ。大人しく彼女のアドバイスに従うことも検討しているよ。楽しみにしていてよ。

Q.25 そう言えば、「アップルパイ以外のパイを食べたことがない」と君が言っているビデオを見たけど

――いつそんなこと言ったっけ?

Q.26 誰かがケンタッキー大学の選手全員に「サンクスギビングで一番好きな食べ物は何か?」ってインタビューをしていたんだ。

――多分、嘘をついていたと思うよ。(笑)私はパイが大好きなんだ。アップルパイは絶対だけど、サツマイモパイとか、どんなパイでもいいんだ。(笑)

Q.27 じゃあ、他のパイも食べたことがあるってことでいい

――ああ。パイは何でも最高だよ。


Q.28 信じている迷信ってある?
――左の靴下を先に履いて、左の靴を先に履くことかな。

Q.29 ケンタッキー大学にいる間、ドレイクとは交流があったの?

――もちろん。彼はいつも手を差し伸べてくれるよ。今年の夏にトロントで開催されたフェスにも参加したんだけど、そこでも見かけたかな。

Q.30 ケンタッキー大学では、ドレイクの勧誘はもはやリクルートの一環かな

――いいや、そんなことはないよ。リクルートの時に彼とは話したことはないよ。

Q.31 スポーツとファッションを扱う財団を始めたんだって?

――私の個性と興味のあることを結びつけようとしているんだ。スタイル、服、ファッション。バスケットボールから離れ多ものを扱っているよ。これから数カ月の間に、小さな服のブランドを立ち上げようとしているところだよ。



Q.32 練習でまだジミー・バトラーに勝ったことはない?

――シーズン中、いつも彼に勝たなければならなかった。私はルーキーだから、他の誰よりも早く行かないといけないんだ。

Q.33 ルーキーの仕事は実際どう

――実際、ベテランたちは私に対してあまりおかしなことをさせてはいないよ。ある日、ジミーのお弁当を持っていく必要がったんだけど、彼から急にテキストが来て、「俺の弁当を早く持ってこい」って言われたくらいかな。

Q.34 彼のカントリーミュージックにはもう飽きた?

――いや、面白いと思うよ。ロッカールームで彼がカントリーミュージックを聴いているのを外から聞いているのは実に楽しいよ。

Q.35 彼がどれくらいカントリーミュージックが好きなんだと思う

――わからないけど、彼はあらゆる曲、歌詞、全てを知っているように見えるね。それが不思議なんだよね。

Q.36 彼の伝説とも言えるような仕事ぶりを初めて見たのはいつ

――夏にシカゴで彼と一緒にいた時かな。5日間、朝5時に起きて、1日に2、3回トレーニングしたよ。その時、「そうか、こりゃ本物だ」って思ったよ。

Q.37 彼はあなたに好意を持っているようだね。彼があなたのどこを見て評価していると思いう?

――彼は私の勤勉さを気に入ってくれたと思う。そして、誰からも引き下がらないところかな。

Q.38 彼からもらったアドバイスで一番のアドバイスは?

――浮き沈みもあるだろうし、良いことも悪いこともあるだろうけど、それを全て受け入れる、ということ。毎日成長するチャンスがある、ということかな。

Q.39 ジミーのことを誤解している人がいるって思う

――悪いチームメイトだと言われたり、勝てないと言われたりすることは事実あるのかなって思う。でも、それが何を根拠に言われていることなのか、私にはわからないよ。ジミーは最高のリーダーであり、チームメイトだ。私はNBAに入ってまだ1年目の青二才だけど、彼のやり方やグループを率いる能力は信じられないものだよ。

Q.40 ジミーにトラッシュトークで勝てると思う

――勝ったり負けたりするかな。勝者は生まれないと思うよ、だって、どちらも止まらないからね。

Q.41 君はNBAのドラフトで13位だった。正直なところ、何位に行けたと思っている

――いつも言っていたのは3位以内だったけど、実際は4位か5位なら行けたと思っているかな。

Q.42 高校時代の年鑑に載っている名言に「Catch flights, Not feelings」(「感じようとせず、まず行ってみよう」のような意味合い)とあるらしいけど、それは本当?

――そうだよ。(笑)

Q.43 信じられない…

――感じようとせず、まず行ってみたら?


 いかがだっただろうか? 試合前にステーキを食べるとか、アスリートとしてもってのほかだと思うが、それを平気でやってしまうところに大物を感じた。個性的かつ強い癖の持ち主であることが伺えるヒーローだが、そんな部分も含めて彼の魅力であり、その独特さが彼を強心臓たらしめているのかもしれないと感じた。ヒーローがこれからNBAで巻き起こしていくヒーロー旋風に、大いに期待したい。



参考:「Tyler Herro Is a Bucket 


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