【番外編】NBAファイナル4で最もお金の使い方が上手なのは? サラリーキャップ格付けチェック 〜Vol.5 ロサンゼルス・クリッパーズ〜

 4回にわたってお送りした、各カンファレンスファイナル出場4チームにおけるサラリーキャップの格付けチェック。好評につき、今回は番外編として、ファイナル4以外のチームをピックアップ。カンファレンスファイナル進出に王手をかけながら、ミラクル・ナゲッツの勢いに飲まれ、まさかの逆転でシリーズ敗退となったロサンゼルス・クリッパーズを取り上げる。



■ウエスタンカンファレンス No.3:ロサンゼルス・クリッパーズ(第2シード)




 1. Paul George:$33,005,556(25.0%)
 2. Kawhi Leonard:$32,742,000(24.8%)
 3. Marcus Morris Sr.:$15,000,000(11.4%)
 4. Patrick Beverley:$12,345,680(9.3%)
 5. Louis Williams:$8,000,000(6.1%)
 6. Ivica Zubac:$6,481,482(4.9%)
 7. Montrezl Harrell:$6,000,000(4.5%)
 8. Rodney McGruder:$4,807,693(3.6%)
 9. JaMychal Green:$4,767,000(3.6%)
 10. Landry Shamet:$1,995,120(1.5%)
 11. Mfiondu Kabengele:$1,977,000(1.5%)
 12. Patrick Patterson:$1,620,564(1.2%)
 13. Terance Mann:$1,000,000(0.8%)
 14. Reggie Jackson:$512,721(0.4%)
 15. Joakim Noah:$183,115(0.1%)

 Others
  Isaiah Thomas:$1,620,564(1.2%)

 Total:$132,150,052
 Luxury Tax:$476,948

■レナード&ジョージがチームを勝利に導けなかったことの未来への影響は大きい



 クリッパーズのサラリーキャップの配分は、ファイナル4進出チームのうちのレイカーズ・ナゲッツ・セルティックスと類似しており、2人のエースが約半分を占めるというもの。この点で言うと、特異なケースというわけではない。レナード、ジョージともに昨夏に約3,300万ドルのマックス契約を結んだのだが、この2人がクリッパーズに加入することを知った時、体に電流が流れるような衝撃が走ったことを覚えている。リーグの中でもトップディフェンダーであり、またオフェンスでもエリートの2人がタッグを組むなんて、まさに「鬼に金棒」「虎に翼」だと、全世界が震撼したことだろう。

 ただ、レギュラーシーズンも独走かと思いきや、レナードはロードマネジメントのため欠場することが少なくなく、ジョージもケガがちで、西2位の好成績は残したものの、2人が一緒にコートに立つことでシナジーが生まれるというレベルにまで達しなかったように感じる。結果、生きるか死ぬかの天王山となったナゲッツとのゲーム7では、8点ビハインドで迎えた第4ピリオド、2人ともがシュートスランプに陥ると、結局最後の最後までその泥沼から抜け出すことができず、2人合わせてFG0/11本の無得点とまさかの沈黙。セカンドラウンド敗退という何ともあっけない幕切れとなり、クリッパーズはフランチャイズとして50年間セカンドラウンド突破ができないという悪夢から再び目を覚ますことができなかった。


 いずれも2021-2022シーズンまでクリッパーズとの契約が残っており、最終年にはレナードが約3,600万ドル、ジョージが約3,700万ドルにまでサラリーが上昇し、チームの財政を圧迫することになるのが気がかりだ。

 ジョージについては、プレイオフ敗退後のコメントがまずかった。「別に今年優勝しなければ失敗の年になるとは感じていなかった」「来年こそ優勝するためにコミットしよう」と語り、チームメイトから呆れられたという。それもそのはず、チームトップの稼ぎ頭が責任感のない言葉でチームメイトを混乱させ、肝心のコートでは勝負所で全く仕事ができないのでは、不信感が募るだけ。クリッパーズはすでに空中分解が始まっているかもしれない。チームやジョージの今後の動向に注目が集まる。


■マグルーダーを除き、10位までが全員主力



 レナード、ジョージ以外の主力メンバーについて見てみると、マグルーダーを除き、サラリーのランキング10位までに皆が名を連ねており、チームに貢献する選手に適切に報酬を与えられている印象だ。強いて言えば、モリスの1,500万ドルはやや高く、過去3度シックスマン・オブ・ザ・イヤーに輝いたルー・ウィリアムズの800万ドル、今季シックスマン・オブ・ザ・イヤーを受賞したハレルの600万ドルがやや低いのが気になるところではあるものの、大方問題のない配分のように感じる。

 加えて、プレイメイキングとスコアリングのお両方ができるレジー・ジャクソンはピストンズとバイアウトしてからミニマムで拾ったため非常に格安。過去ディフェンシブ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーにも輝いたことのあるノアに至っては、10日間契約からシーズン再開に当たってロスター枠が拡大したことに伴う特別契約と、実績・実力のある2選手を破格で手に入れられたことは評価できる。ノアはそこまでプレイ時間は伸びてこなかったものの、ジャクソンは控えガードとしてチームを献身的によく支えた。これらの点に鑑みると、ロサンゼルスと言えば「派手さ」がどうしてもつきまとうが、意外にもチームの懐事情をしっかり押さえた選手獲得ができていたように感じる。


■総評

 もし、来季も変わらないロスターでシーズンに臨めるとしたら、間違いなくリーグの中でも脅威であり続けるに違いない。お金の使い方としても決して大逸れた動きをしているというわけではなく、逆に堅実さもあるくらい。一方で、ジョージ獲得のために指名権を多く放出しドラフト指名は望めないため、現有戦力でのケミストリー構築と健康状態の維持がチームの躍進を握っていくと思われる。ケミストリーについては、ルー・ウィリアムズもプレイオフ敗退後に指摘していた。レナード、ジョージが今季の悔しさをバネにさらに一皮むけることができれば、クリッパーズが来季優勝する姿を見ることになっても、それは何ら不思議なことではないだろう。


参考:「Los Angeles Clippers 2021-22 Salary Cap」(Spotrac)

Los Angeles Clippers 2021-22 Salary Cap


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