NBAファイナル4で最もお金の使い方が上手なのは? サラリーキャップ格付けチェック 〜Vol.4 マイアミ・ヒート〜
4回にわたってお送りしている、各カンファレンスファイナル出場4チームにおけるサラリーキャップの格付けチェック。早いもので最終回となる今回は、MVPのヤニス・アデトクンポを擁する東の横綱・バックスを叩く下克上を成し遂げ、カンファレンスファイナルに上り詰めてきたマイアミ・ヒートを取り上げていく。
■イースタンカンファレンス No.2:マイアミ・ヒート(第5シード)
1. Jimmy Butler:$32,742,000(24.5%)
2. Goran Dragic:$19,217,900(14.4%)
3. Andre Iguodala:$17,185,185(12.8%)
4. Solomon Hill:$12,758,781(9.5%)
5. Kelly Olynyk:$12,667,886(9.5%)
6. Meyers Leonard:$11,286,517(8.4%)
7. Jae Crowder:$7,815,533(5.8%)
8. Tyler Herro:$3,640,200(2.7%)
9. Bam Adebayo:$3,454,080(2.6%)
10. Derrick Jones Jr.:$1,645,357(1.2%)
11. Udonis Haslem:$1,620,564(1.2%)
12. Kendrick Nunn:$1,416,852(1.1%)
13. Duncan Robinson:$1,416,852(1.1%)
14. KZ Okpala:$898,310(0.7%)
15. Chris Silva:$466,918(0.4%)
Dead Cap
Ryan Anderson:$5,214,583(3.9%)
A.J. Hammons:$350,087(0.3%)
Yante Maten:$100,000(0.1%)
Cap Hold
Luke Babbitt:$1,618,486
Jordan Mickey:$1,618,486
Dwyane Wade:$1,618,486
Total:$132,627,000
Luxury Tax:$-1,988,772
■2,000万ドル超えはバトラー1人のみ
NBAファイナル4のうち、レイカーズ、ナゲッツ、セルティックスの3チームには2,000万ドル以上の選手が2人いる(レイカーズ:レブロン&デイビス、ナゲッツ:ミルサップ&ヨキッチ、セルティックス:ケンバ&ヘイワード)が、ヒートにはバトラー(約3,300万ドル)しかいない。また、1,000万〜2,000万ドルの中堅ゾーンには5人もの選手がいる(レイカーズ、セルティックスには1人、ナゲッツには3人)。つまり、特定の選手だけに偏重しすぎる配分は避け、可能な限り多くの選手に満遍なくお金が行き渡るような配分となっているわけだ。その点からすると、ファイナル4の中でも、かなり稀有な存在であるかもしれない。
チームトップサラリーのバトラーとはマックス契約を結んでおり、約3,300万ドルを支払っているわけだが、打倒バックスのアップセットを成就するのにはバトラーの気迫のこもったプレイが欠かせず、レブロン・ウェイド・ボッシュのBIG3時代以来となるカンファレンスファイナル進出の功労者と言っても決して過言ではないだろう。
■1,000万〜2,000万ドルのミドル層の明と暗
12年目のベテラン、ドラギッチも渋い活躍を見せる。レギュラーシーズンはケンドリック・ナンの大抜擢と想像以上のパフォーマンスもあり控えに甘んじていたが、そのナンがケガでベンチからの出場にローテーションが切り替わると、違和感なく司令塔として活躍を遂げるようになった。プレイオフでも、勝負どころのスリーなどで、バトラーとともにチームを牽引。約1,900万ドルを支払う価値のある安定感だ。
ウォリアーズからグリズリーズでの浪人期間を経てヒートに加わったイグダラも、攻守で潤滑油として十二分に機能する。3回の優勝と1回のファイナルMVPの経験、守備職人としての貢献、ベテランらしいメンターとしての役割など、いくつものアセットを持つ彼はヒートでも貴重すぎる存在だ。そんなイグダラ自身も、ヒートは加入してから比較的日が浅いが、ヒートのカルチャーを非常に気に入っている。(「アンドレ・イグダーラが絶賛するヒートのカルチャー、試練の最中にあるメイヤーズ・レナードとケンドリック・ナン」)
一方で、残りの3選手は、サラリーに見合った活躍が若干できていない印象で、やや物足りなさを感じる。約1,300万ドルを稼ぐソロモン・ヒルはほぼ出場しておらず、マイヤーズ・レナードはレギュラーシーズンこそ先発に名を連ねインサイドでのハッスルでチームを奮い立たせていたが、COVID-19を挟んでケガの治癒が遅れ、今はベンチを温める日々が続いている。オリニクはベンチからの起用でつなぎ役として一定量のパフォーマンスを見せるものの、約1,300万ドルのサラリーからすると、及第点には至っていない気がする。
■内外でヒートの主力選手は破格の契約者揃い
思い切りの良いスリーポイントと堅実な守備が得意のクラウダー(約800万ドル)、強心臓のシューターであるルーキーのヒーロー(約360万ドル)、守護神・アデバヨ(約350万ドル)、もう一人のピュアシューターであるダンカン・ロビンソン(約140万ドル)、ドラフト外ながらオールルーキーファーストチーム入りを果たしたナン(約140万ドル)など、ヒートの主軸には「安すぎ!」と思わず叫びたくなるユニークな選手ばかり。
中でも、ロビンソンとナンはドラフト外選手と、「ダイヤの原石」を見つけてくるのがうまいのがヒート。Mr.ヒートのウェイド、レブロンと同期でありヒートの重鎮であるハスレムも同じくドラフト外だ。ドラフト選手はどうしてもルーキー契約が保証され、それなりのサラリーを計上しなくてはならないが、ドラフトにかからない逸材を見つけてくれば、チームは安価に強化が図れる。さらに、ドラフト選手、ドラフト外選手がチーム内で競い合えば、底上げにもつながり、相乗効果が生まれる。ヒートの特筆に値するカルチャーだと思う。
■総評
選手間のサラリーのバランスが非常に良く、ドラフト外選手も多く活躍するヒートは、ラグジュアリータックスにもファイナル4で唯一入っておらず、4チームの中で1、2を争うお金の使い方のうまさがあるチームと言えるだろう。過去、ハッサン・ホワイトサイド(ブレイザーズ)やタイラー・ジョンソン(ネッツ)などとの高額契約がたたり、欲しい選手を獲得しようにも身動きが取れない時期も少し前まであったが、今はそのうみも全て出し切り、理想的な布陣になってきている。カンファレンスファイナルでも2連勝と最高のスタートを切ったヒートは、2013年以来のファイナル出場、そしてNBA優勝を果たせるか。
参考:「Miami Heat 2019-20 Salary Cap」(Spotrac)
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